モルタル外壁の特徴やデザインの種類、劣化症状と解決のためのメンテナンス方法を解説
1990年頃まで、外壁の主流はモルタルでした。
築30年程度が経過しているお住まいなら、圧倒的にモルタル外壁が多いのではないかと思います。
木や白土といった自然な風合を好み使用していた日本でモルタルが普及した理由はあるのですが、今では工程が複雑で施工日数もかなり掛かることから、コストが高くなりがちなモルタルはあまり用いられなくなりました。
しかし、モルタルならではの長所は変わりません。
今回はモルタル外壁が普及したきっかけと特徴、人気の仕上げ方法に加えて今後長く安心して生活するためのメンテナンス方法を外壁リフォームの専門家がご紹介したいと思います。
日本は昔から自然の材料を住宅に取り入れる傾向にありました。
木材はもちろんですが、茅葺き屋根(ススキ・チガヤ) や白壁・漆喰等がよく使用されていました。
馴染み深く親しまれていた自然材料の建材でしたが、そのほとんどに当てはまる大きな欠点が『可燃性』だということです。
江戸時代には3年に1回は大火があり、7日に1回は小火が起こっては住宅の消失が続いてしまったようです。
東京都心部が火災によって焼け野原になったことから不燃性のモルタルが注目され、復興の際に採用され始めました。
全国的にモルタル外壁が普及したのは昭和25年、モルタルの下地となるメタルラスの規格が制定された頃です。
モルタルに関わらず、日本の住宅に不燃性の建材が使用されるようになったのは大規模な火災の経験があったからなんです。
ローコスト住宅の普及に加え、現場目線ですとモルタルと窯業系サイディング・金属サイディングには施工の効率化とコストの面で大きな違いがあります。
サイディングは工場で生産されたパネルを貼り付ける工法のため、現場で左官職人が手作業で仕上げるモルタル壁に比べて施工期間が短く、コストも抑えやすいという利点があります。
職人の技量で変わる仕上がりよりも、品質が安定している点も窯業系や金属サイディングの普及の後押しとなりました。
地震が多い日本においては、揺れに対する耐久性や重さが外壁材選びの重要な基準の一つとなりました。
モルタル外壁は一体的に塗られる性質上、建物の動きや乾燥による収縮に弱く、ひび割れ（クラック）が発生しやすいという特性があります。
小さなひび割れでも放置すると劣化が進みやすいため、定期的な点検やメンテナンスが不可欠です。
一方、パネルを組み合わせるサイディングは、目地部分が揺れによる衝撃を吸収しやすい構造となっており、地震時では比較的ひび割れが発生しにくいとされています。
加えて、モルタルは他の外壁材よりも重い部類になります。
重量があるほど建物は揺れの影響を受けやすくなるため、現在の外壁リフォーム市場シェアでは最も軽量な金属サイディングが1位になっているのです。
見た目が似ているモルタルとコンクリートですが、構成材料に若干の違いがあります。
モルタルの最大のメリットはテクスチャー（模様やパターン）を自由に描くことができるという点です。
吹き付け塗装にしても、リシンやスタッコなどさまざまな仕上げ方法があります。
吹き付け後にローラーをかけ凹凸を潰す仕上げ(吹き付けタイル・ボンタイル)、リシン吹き付け後に剣山のような鋭い道具で削る「掻き落とし」、近年人気が高いジョリパット等、モルタル外壁ではお客様ごとのご希望に沿った仕上がりが叶うのです。
サイディングのようにパネルを貼り合わせる工法ではないため、目地（継ぎ目）がありません。
その結果、目地部分に必要なコーキングの打ち替えや補修が不要になります。
外壁全体が一体化して見えるため、モルタルならではの美しい外観を演出できる点も魅力の一つです。
モルタルは無機質な材料で構成されており、非常に燃えにくい素材です。
火災発生時に延焼を抑える効果が期待でき、基準の厚みを満たせば建築基準法で定められた防火構造として認められるケースもあります。
特に、防火性能を重視する都市部や密集地域の住宅では選択肢の一つとなるでしょう。
モルタルの注意点としては、原材料の観点から≪ひび割れを起こしやすい≫ということが挙げられます。
材料の配合や施工中にどうしてもできてしまう塗り重ね部分、下地木材の伸縮や建物の揺れ等、あらゆるタイミングでひび割れ(クラック)が発生してしまう可能性があり、そのひび割れから劣化や雨漏りに発展してしまいますので、お住まいの外壁がモルタル外壁という方は他の外壁材よりもこまめに点検してあげてください。
リシンやスタッコといった表面に凹凸のある仕上げは、ほこりや排気ガスなどの汚れが溜まりやすい傾向があります。
さらに、経年により塗膜の防水性が低下すると、湿気を含んだ箇所にコケやカビ、藻が発生しやすくなります。
日陰や風通しの悪い場所では注意が必要です。
モルタル壁の仕上がりは、職人の技術力に大きく依存します。
同じ工法であっても、職人によって仕上がりの質感や風合いが異なる場合があります。
2019年に発生した台風15号の際には猛烈な強風が吹きつけ、モルタル外壁が剥離してしまったというご相談がありました。
遠くから見てもひび割れ(クラック)が確認できる、築年数が経過している、近頃モルタル外壁のメンテナンスをしていないという方はぜひ街の外壁塗装やさんの無料点検をご依頼ください。
モルタル外壁は仕上げ方によって大きく印象が変わり、それこそが魅力や楽しみな部分でもあります。
ここでは代表的な施工方法をご紹介します。
細かい骨材を含んだ塗材を吹き付け、ザラついたマットな質感を出す方法です。
ナチュラルで落ち着いた印象になり、和風から洋風住宅まで幅広く馴染みます。
タイルガンを使用し、ツルツルした陶磁器のような質感やなだらかな凹凸を表現する仕上げです。
一般的な「タイル」という言葉から連想されるイメージとは異なるため注意です。
リシンよりも厚みと凹凸を持たせた重厚感ある仕上げです。
コテ塗りと吹き付け塗装の2種類に分かれます。
ジョリパットは、およそ40年近い歴史があるモルタル外壁用意匠性塗材ではありながら、モルタルとは大きな違いがあります。
大きな特徴としては、モルタルでは発生しやすいとされるひび割れを起こしにくいという点です。
ジョリパットは塗材の柔軟性・可撓性が高いため、建物の動きに追従しひび割れを起こしにくい性質があります。
その点から耐久性も高く、15～20年近くはメンテナンスフリーで生活することができます。
※もちろん経年による汚れの蓄積はありますので、頃合いを見ての塗装は行いましょう。
ホルムアルデヒドの放散量が少ないF☆☆☆☆の塗材ですので外壁だけでなく内壁にも使用でき、デザインのバリエーションも豊富です。
既存がモルタル外壁であり「イメージチェンジをしたい」とお考えの方はぜひご検討ください。
1ヵ月に１度くらいは点検してあげましょう！
定期的にモルタル外壁を点検してあげましょう。悪いところは早期に発見し、迅速に補修してあげるのが理想です。劣化に気づくのが早いほど、修繕費用も安くなります。２階部分の外壁など、見にくいところは無理にチェックしなくても大丈夫です。
地上から見えるところをチェックしてください。台風が通過した後など、悪天候後もチェックしてあげてください。
モルタルは表面が細かくザラザラしている仕上げが多いため、どうしても汚れが付きやすくなります。
汚れが付きやすいということは、それを栄養源とするカビや藻、苔も生えやすいということです。
カビや藻、苔は菌糸や根を張ってモルタルに食い込んでいるので、生えたままにしておくと洗っても汚れが落ちづらくなります。
見つけたら、ブラシなどでやさしく擦って落としてあげてください。
苔や藻が発生しやすいのは、モルタル外壁に限らず日当たりの悪い北面や湿気がこもりやすい1階部分、風通しの悪い狭小地です。
清掃や塗装の目安は、必ず劣化が顕著な面を参考に検討しましょう。
モルタルを施工すると、乾燥して硬化していく過程で必ず収縮が起こります。この収縮が原因でひび割れが発生することがあります。
現在では添加剤の影響やモルタルの下地にメッシュを入れることによって、収縮によるひび割れは大分防げるようになりました。
それでもモルタルが外壁というお住まいの場合、点検してみると大半はクラックが見つかります。
施工中の天候や立地の問題から、どれほど経験値の高い左官職人が施工したとしてもモルタルのひび割れを完全に防ぐという事は不可能です。
モルタル外壁である以上、ひび割れとは根気よく上手に付き合っていくということが重要なのです。
ひび割れは幅によって危険度が変わりますので、注視してあげてください。
雨漏りを起こす可能性も低いため、今すぐ対処が必要というわけではありません。
ただ、これ以上ひび割れの幅が広がると危険ですので、定期的に点検してあげてください。
モルタル内部に雨水が浸入していきますし、放置していると剥落する危険性もあります。
雨水が染み込んでくれば雨漏りに繋がります。
モルタルが剥落して、その下に人がいれば怪我では済みませんし、お住まいのどこかに当たれば落下先のものを破壊してしまう可能性もあります。
モルタルの外壁もサイディングと同じように塗装が施されています。新築の時と比べて色褪せてはいませんか。
色褪せはモルタルを保護している塗膜が傷んできた証拠です。
色褪せが発生したら、外壁塗装を検討する時期に来ています。
モルタル外壁に触れて手に白っぽい粉が付着するのであれば、チョーキング現象（白亜化）が発生しており、色褪せよりも塗装が劣化してきたことを示しています。
塗料は塗膜になる成分の樹脂と色を付ける顔料、その他に各種の添加剤（防苔や防藻、防カビ剤、粘度調整剤など）から作られています。
外壁塗装した直後は強固だった塗膜も紫外線などによって徐々に分解され、顔料が表面に露出してきます。
この表面に露出した顔料が手に付いた白っぽい粉の正体です。
チョーキング現象が起こるということは塗膜の分解が進行した結果ですから、防水性能が低下しモルタル外壁の劣化を進行させている状況と判断できます。
近いうちに塗り替えてあげましょう。
健常であるならば、リシンやスタッコなどの吹き付けがモルタルの下地から浮いたり、剥がれたりすることはまずありません。
モルタル外壁にひび割れ（クラック）などがある場合、そこから水分が染み込んで湿気を含んだ空気が塗膜を押し上げて浮いたり、膨れたりすることがあります。
放っておくと、塗膜の浮きが全体にまで広がってしまうこともあります。
その場合、吹き付け塗装で再度リシンやスタッコを作り上げていかなければならないので、普通の塗装よりも費用がかかることになります。
外壁にクラックやひび割れがある場合、その幅や長さが変化していませんか。進行や拡大していませんか。
モルタルの外壁で最も気をつけてあげないといけないのがクラックの進行です。
幅0.3mm未満のヘアークラックがそれ以上の構造クラックに進行してしまうことがあります。
幅だけでなく、長さも注意して見てあげてください。
地震後や強風後はもちろんのこと、少なくとも季節毎に定期的な点検をしてあげましょう。
その際、カメラを使用して記録を残しておけば後の比較が容易になります。
幅や長さを比較できるものと一緒に撮影しておけばモルタル外壁の変化も一目瞭然です。
モルタル外壁を手洗いすることによって苔・藻、カビを落とします。
水をかけて、台所用の中性洗剤を含ませた柔らかいブラシで軽く擦ってあげてください。
※酸性やアルカリ性は悪影響を与える可能性があるので使わないこと
その後、水で洗い流し、乾いた布を押し当てて水分を吸収させます。
苔・藻、カビが繁殖してしまったり、汚れが酷い場合は完全に落としきれないこともあります。
高圧洗浄機をお持ちの方は強い水圧で洗い流したくなると思いますが、塗膜や表面を傷めてしまう可能性がありますので、やめておきましょう。
スチームクリーナーも同様です。
高温で塗膜や表面を傷めてしまう可能性があります。
「汚れを落としきれない」「汚れは落ちたけど色褪せて見える」となったら、モルタル外壁の塗り替えを検討する時期に来ています。
0.3mm未満のヘアークラックならば、そのまま外壁塗装してしまっても問題ありません。
幅が狭いクラックですので、下塗りフィラーで塗装してしまえば目立たなくなるどころか、クラックがあったことさえ分からなくなります。
使う塗料は今後のリスクを考え、弾性・微弾性塗料にしておきましょう。
クラックの幅が拡がったり、新たにクラックができたりしても塗膜が伸びて追随するので、外壁の表面に裂け目や割れ目が出現しにくくなります。
モルタル外壁に水分が含まれている状態で弾性塗料を塗布すると塗膜の膨れ・剥がれを起こしてしまいますので、塗料の『透湿性』もチェックしましょう。
ひび割れが0.3mm未満のヘアークラックのみで、チョーキング現象が発生している場合は外壁塗装を行い、防水性能を取り戻します。
クラックがない場合でも通常の塗料ではなく、モルタルにはやはり弾性・微弾性塗料を使うことをお勧めします。
水分や湿気を含んだ空気が塗膜を押し上げ、浮きや膨らみができてしまっている場合、その部分と周辺を含めて剥離し、モルタルを作り直します(パターン付け)。
剥がした部分にモルタルを塗り直し、吹き付け塗装で再度、リシンやスタッコの模様や柄を付け、塗装していきます。
放っておくと、塗膜の浮きが全体にまで広がってしまうこともあるので、早めの対処が必要です。
模様や柄を再度付けるので、普通の塗装よりも費用がかかることになります。
雨水が浸入したり、モルタルの剥落が起こらないよう、構造クラックを補修します。
クラック部分を清掃し、プライマーを塗って、シーリング剤やモルタルで補修します。
クラックの深部にまで補修材を充填させる必要があるため、幅によってはVカットやUカットをしてから補修することもあります。
剥落が起こりそうな場合は壁に穴を開けてビス止めすることもあります。
また、最近ではVカットなどのように切削を行わず、特殊なフィルムテープをひび割れに貼り付けて熱で密着させるノンカットフィルム工法（A-NC工法）も注目されています。
ノンカットフィルム工法は粉塵が発生せず、補修跡も残りにくいためオススメのひび割れ補修方法です。
クラックの補修跡が目立たないよう、応急処置以外は外壁塗装に合わせて行うことがほとんどです。
※模様付けして塗装します。
モルタルはひび割れやすいため、柔軟性のある弾性塗料や微弾性塗料の使用が推奨されます。
これらの塗料はひび割れに追随して伸縮するため、表面に亀裂が現れるのを防いでくれます。
また、内部の湿気を排出しやすい透湿性の高い塗料を選ぶことで、モルタルの劣化症状の一つとしてご紹介した塗膜の膨れなどの不具合も起こりにくくなります。
従来であれば、透湿性と弾性を兼ね備えたピュアアクリル塗料の系列は費用が高くなりがちでしたが、近年ではピュアアクリルにも関わらず比較的低コストな「ダンネスト」が登場しています。
ダンネストはモルタルに適した「弾性」とアクリル塗料ならではの「透湿性」を持ち合わせており、さらにメインの機能として圧倒的に優れた断熱性能を備えています。
街の外壁塗装やさんでも、モルタル外壁の塗装メンテナンスにはダンネストをオススメすることが多いです！
モルタルの劣化が進行している場合や、外壁材の変更を希望される場合には、既存の壁を撤去してサイディングなどに張り替える方法が選ばれます。
下地から補強できる利点がある一方、モルタルの撤去費用がかかるため高額になります。
なお、リフォーム後もモルタル外壁を採用したいという場合、既存のモルタルに新しいモルタルを使用したカバー工法を行うことはできません。
重量のあるモルタルを2重にしてしまうと、住宅への負荷や耐震性などに影響が発生するためです。
モルタル外壁に金属サイディングを使用した外壁カバー工法なら可能です。
ご紹介させていただいたモルタル外壁の特徴や補修方法を見てお分かりいただけたかと思いますが、性質上ひび割れを起こしやすく、劣化が進行するほどに補修の工程も増えるため、費用が嵩む傾向があります。
そのため大切なのはモルタル外壁の劣化が進行する前です。
初めての外壁塗装であればお住まいの状態に合わせて築5～10年目、2回目以降の外壁塗装は使用した塗料の耐用年数や、モルタル外壁に発生したチョーキング・汚れの付着・色あせ・ひび割れ(クラック)などの劣化症状に応じてメンテナンスを検討しましょう。
その際には必ずモルタル外壁に適した塗料を使用し、クラックの状態に合わせた補修を行うことのできる塗装業者に工事をお願いしましょう。
またパターン付けもポイントです。
既存モルタル外壁の仕上がりを見極め、元通りに補修するというのは高い技術が必要です。
安価な工事をしてくれる業者にお願いした結果、剥離や膨れを起こし再補修…といったトラブルを起こさないよう、正しく施工ができる塗装業者にお任せしましょう。
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